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また桜は散り過ぎて
第4章 喫茶・桜葉

 休日にふさわしい朝だった。
カーテン越しにもその天気の良さが感じられる。一週間がんばってようやく休める土曜日。
毎週毎週目覚めた時にまばゆい明るさに包まれるわけではない。
だからこそより晴天は嬉しいのだ。
 起き上がって、勢いよくカーテンを引くと青い空からの光の反射が目に飛び込んでくる。
庭の花壇に花を植える大家さんの背中も見えた。
・・今日、喫茶店もオープンだ。こんないい天気なんて幸先よさそうね・・
 お湯を沸かし、インスタントコーヒーをマグカップに振り入れる。
いつもインスタントだけど今日は本格的なコーヒーが飲めるんだ。
と、早々と喫茶店でコーヒーの香りを楽しむ自分の姿を想像した。
 もちろん、今日、行くつもりだ。「喫茶・桜葉」に。
よく顔を見なかったあの人が店主なのだとしたら、今日はちゃんと顔を見たい。
そしてできれば、桜葉という名前はどこからきているのかを知ることができたら。
 
 ピーピーケトルが過剰な勢いで湯が沸いたことを知らせる。
ごぼごぼとカップに熱湯を注ぎ入れる。
立ち上るコーヒーの香りと喫茶店で丁寧に淹れられるコーヒーの香りの違いが
果たして私にわかるだろうか、とマグカップを鼻の前で行ったり来たりさせた。


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