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また桜は散り過ぎて
第4章 喫茶・桜葉

 午後3時なんていう時間はもっとも喫茶店が混んでいそうだと、
5時少し前にアパートを出ることにした。
お茶には遅い時間かもしれないが全く問題ない。
なんといっても、目と鼻の先といえるくらいの近さなのだから。

 店の前には開店祝いの花が行列を成すかのように並べられている。
その中には石沢ミートの名前もあった。
 ドアを開けると、想像よりも甲高い鈴の音が迎え入れてくれた。店内は満席のようだ。
「いらっしゃいませ。あちらにお席ありますから、どうぞ」
カウンターの方から声がして、見ると手をすっと差し伸ばしている。
その方向に目をやると、壁際の二人掛けのテーブル席が空いていた。
席に着くとすぐに、店主が水とメニューを持ってきてくれた。
「いらっしゃいませ」
その声には覚えがある。のぞき見した時に聞いた声だった。
よし、今度は顔を確認するぞと見上げてみた。目が合った。
遠慮がちな笑みを浮かべた男の顔を見て、あれ?と思った。
どこかで見たことがあるような、目元だった。



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