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また桜は散り過ぎて
第5章 常連の仲間入り
10分もしないうちに湯気をあげるチャーハンを持ってきてくれた。
小西さんは皿を二つ持っていて、一つは私のテーブルに置き、
もう一つは通路を挟んだテーブルに置いた。
「私もここで食べてもいいですか?」
その時のはにかむ様な笑顔は、私の中心をきゅんとさせる。
次に心臓の動きを少し早めた。
こんなに近い距離で話しをしながら、おまけにご飯まで一緒に食べられるなんて、
緊張もするけど一歩踏み込んで彼の人となりを知るチャンスは二度とないかもしれない。
「もちろんです。それより、ほんとにご馳走になっちゃって、いいんですか?」
「ええ、私が図々しくお願いしたんですから、何の遠慮もなさらずに。さあ、どうぞ」
さっそくスプーンでチャーハンをすくう。
食べると、本格的な中華の味が口の中にひろがる。
中華の調味料の具体的がよくわからない私でも、
中華料理屋さんで食べるのと変わらない味だとわかる。
気の利いた例えなんかできないけれど、とにかく美味しいという事だけは伝えられる。
美味しいです!と目を細める私に、小西さんは嬉しさを表すように目じりを下げた。