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また桜は散り過ぎて
第5章 常連の仲間入り

「あらあ、もうこんな時間・・すいません、閉店時間まで居座ってしまって」
 せっかく早仕舞いをしたのに、結局9時の閉店まで私が居てしまったのだから、
店を閉めた意味がなくなってしまったのではないかと身を縮めた。
「そんなに気にしないでください、私の方がお引止めしてしまったんですから。
 かえってご迷惑になってしまいましたか?」
 今度は小西さんの方が身を縮め、申し訳なさそうに背中を丸めた。
そして夜遅い時間の帰り道は大丈夫かと心配してくれたので、
お店を出てすぐのところだからものの1分もかからないと言うと、
「そんなに近かったんですか」と驚きながらも笑っていた。
「チャーハン、ごちそうさまでした。とても美味しかったです、ありがとうございました」
お礼を言ってからケーキセットのお代をテーブルの上に置いた。
「じゃあ、また来ます。おやすみなさい、ほんとにありがとうございました」
 ドアを開け送り出してくれた小西さんを振り返ると、
大きく包み込んでくれるような落ち着きのある笑顔を見せながら、
またお待ちしています、と丁寧に頭を下げた。

 コロコロという軽やかなドアベルの音を背中に浴びながら、
目と鼻の先の我が家へ向かう。
商店街はまだ明るさが残っている時間なのに、
帰り道を心配してくれた小西さんの優しさに、一人笑みをこぼした。



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