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また桜は散り過ぎて
第6章 さくらバーで惑わされ
さくらバーの扉を開けるのは1ヶ月半ぶりになるだろうか。
店に来るのはいつも金曜日、外でお酒を飲むのは休みの前夜と決めているので、
逃すと一週間また一週間と日が空いてしまう。
そーっとドアを開けると、すぐに省吾さんと目が合った。
一瞬パッと表情を開いたけど、彼はすぐに目を細めて口元をへの字に曲げた。
「・・こんばんは」
カウンターの真ん中はすでに3人組の客によって埋まっていたので、
一番端の席に遠慮がちに座った。
「いらっしゃい、すんごい久しぶりだねぇ、元気で生きてたか、よかったよかった!」
わざとだろうが頬を少しふくらませ、怒っている風を装う省吾さんが、
なんだかかわいく思えた。
私のこと、待ってくれていたんだろうか、と。
「ほんと、久しぶりになっちゃったぁ。いろいろと忙しくてさぁ」
「へ~え、忙しいいろいろって、あっちの男こっちの男って、
相手するのに手いっぱいだったのかな?」
その言葉は、私に甘酸っぱい笑みを作らせた。
これってヤキモチなんじゃない?省吾さん、私のこと気にしてくれてるんじゃない?って。