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また桜は散り過ぎて
第1章 変化は出会いへ繋がる
ここに来る前に住んでいたのは、東京23区のビル街。
日本橋にほど近い、整然とコンクリートの箱が立ち並んでいる、
その中の賃貸マンションの小さな部屋に住んでいた。
窓から川が見えた。一緒に高速道路も見えた。
目を休めるような景色とは縁がない、利便性が良いだけの町だった。
なぜそんな町に住んでいたかというと、その時付き合っていた男に勧められたからだ。
その男は、取引先の担当者、の同僚だった。
私が勤めている会社は洋服の付属品の卸問屋。
アパレルメーカーが主な取引先で、若い世代が多くを占める会社がほとんどなので、
軽いノリで会社間の合コンはよく行われていた。その恋人とも、きっかけは合コンだった。
オシャレで気さくで、好きな事を仕事にしているという誇りと自信に満ち溢れていて、
同じ服飾業界の中にいても地味で華やかさに欠ける私から見ると高嶺の花のように思えた。
だから、付き合ってほしいと言われた時には
たいして考える事もなく受け入れてしまった。
だって、悪い人ではなさそうだし。
彼が私の中にこれだという良いところを見つけたから付き合いたいと思ったはずだ、と
何となく感じる差を自身で納得させていた。