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また桜は散り過ぎて
第10章 喫茶・桜葉で知った、過去と事実

喫茶・桜葉に寄るのは半月ぶりだ。
週に一度は来ていたのに。
店の前で足を止めることはしょっちゅうだったが、
どうしても二人に対するもしかしたらを想像してしまい、うまく話ができるか
不安になって店に入ることができなくなってしまった。
コロコロと軽やかな鈴の音を奏でたドアの隙間から顔をのぞかせると、
振り向いた小西さんが表情を開いてこちらを見た。
まるで私を待っていてくれたような笑顔だった。
「いらっしゃい」
明るい声で、一言だけだった。省吾さんなら久しぶりを強調しただろうけど、
小西さんは言葉にはせず静かに口角を上げていた。
「久しぶりになってしまいました」
私の方から言ってしまった。
「そうですね。お忙しかったんじゃないですか?」
それ以上は言わず聞かず、お水とメニューをテーブルに置いた。
「ええ、めずらしく忙しい日が続いたんで、帰ってからも休みの日もダラダラしちゃって」
本当は忙しくなんかなかったけれど、話しを合わせた。
「やっと明日はお休みだし、今日は晩御飯をこちらでいただこうかと。
喫茶店といえばのナポリタン、それとアイスコーヒーと・・」
「と?」
「デザートにケーキも食べちゃおうかな。え、食べ過ぎですか?」
「そんなことないですよ、嬉しいです、たくさん食べてもらえて。で、ケーキはなにを?」
「じゃあティラミスで」
かしこまりました、とめずらしく胸に手を当てる仕草で笑いを誘った。

