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また桜は散り過ぎて
第10章 喫茶・桜葉で知った、過去と事実
 さっそくナポリタンの具材が炒められる音が静かな店内に響く。
客は他にも3人ほどいるが、みな一人で来ている客ばかり。
新聞を広げている人、スマホにかじりついている人、
あ、あの人は時折ノートに何か書き込んでいる。
仕事なのか、それとも思いついた言葉を綴っているのか。
 静かに流れるクラッシック音楽は、
あくまでも後ろに控えるまさにバックグラウンドミュージック。
人々の息遣いを隠してくれるありがたい存在だ。
 だけどフライパンで炒める音は隠せない。
出来上がりを待っている私にとっては刺激的な音だ。
「お待たせしました」
湯気と匂いが空腹に刺激を与えながら立ち上り、私の前でさらに大きくなる。
「うわぁ美味しそう。いただきます」
飛びかかりそうな勢いでフォークを掴む私に小さな微笑みを残して、
小西さんはカウンターへと戻っていった。


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