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また桜は散り過ぎて
第10章 喫茶・桜葉で知った、過去と事実
店を出たところで、私の足は動かなくなった。
小西さんの口からこぼれ落ちた、桜葉という名の由来。できれば違っていてほしかった。
私の想像は妄想に過ぎなかったと胸をなでおろせる話であってほしかった。
でも・・
突っ立ったままの私に怪訝な目を向けて通り過ぎていく人と目が合ってしまい、
ようやく歩き出すきっかけができた。
アパートまでのほんの数メートルがとても長く感じた。
重い足取りで門を抜け、やっとのことで自分の部屋までたどり着くのに
どれくらいの時間がかかったか。
暗い部屋に電気が灯っても、私の心は薄暗い。
どうして?どうしてそんなに闇に包まれているの?
小西さんのお母さんの旧姓が桜葉。省吾さんの名字は桜葉。
省吾さんは離婚した母親に連れられて家を出た。
離婚したのだから、母親は旧姓に戻った可能性はある。そして・・
彼らは別れ別れになった兄弟かもしれない。
そういうふうに考えてしまうでしょう?これだけ共通点があるのだから。
もしも彼らが本当に兄弟だったとして、それが私にとって・・まずい事なの?
もしまずい事だと思うのなら、それはなぜ?
それは・・
省吾さんのことも、小西さんのことも、好きだという気持ちがあるから?
兄弟かもしれない二人のうちのどちらかを選ぶことになるかもしれない。
そう考えたら・・・