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また桜は散り過ぎて
第10章 喫茶・桜葉で知った、過去と事実
「もう帰りますから、ごちそうさまでした。長居しちゃってすみません」
バッグの中をかき回して財布を取り出すと、
小西さんは引き留めることはせず、黙ってうなずいた。
お金を払いながら、急に私は思いついて尋ねてみた。
「そうそう、前から気になっていたんですけど、お店の名前、
桜葉って、由来とかあるんですか?」
このお店ができる。喫茶店ができる。名前は「桜葉」と知った時から、知りたかった。
その名前がどこからきているのか。
お釣りをトレーにのせた小西さんが、少し寂しそうな、それでも笑顔を作って口を開く。
「桜葉というのは母の旧姓なんです」
聞いて、体を電流が貫いたかのように震えが走った。桜葉は、名字だった。
ということは・・
その場で聞きたかった。確認したかった。
じゃあ弟さんの名前は、と。でも怖くて聞けなかった。
もしも、もしも私の知っている名前だったら。それを今、聞いてしまったら、
私は普通に挨拶をかわして店を出ていくことができるだろうか・・
「あの、町田さん?どうかしたんですか?」
「え?あ、いえ、きれいな名字だなって。ではこれで、おやすみなさい」
唐突に話を切り上げドアに向かう私に背後から小西さんがめずらしく
大きめの声をかけてくる。
「町田さん!お釣りお釣り!」
「あっ!忘れちゃった!」
二人で声をあげて笑った。おかげで凍り付いていた私の気持ちは瞬時に溶かされた。
バッグの中をかき回して財布を取り出すと、
小西さんは引き留めることはせず、黙ってうなずいた。
お金を払いながら、急に私は思いついて尋ねてみた。
「そうそう、前から気になっていたんですけど、お店の名前、
桜葉って、由来とかあるんですか?」
このお店ができる。喫茶店ができる。名前は「桜葉」と知った時から、知りたかった。
その名前がどこからきているのか。
お釣りをトレーにのせた小西さんが、少し寂しそうな、それでも笑顔を作って口を開く。
「桜葉というのは母の旧姓なんです」
聞いて、体を電流が貫いたかのように震えが走った。桜葉は、名字だった。
ということは・・
その場で聞きたかった。確認したかった。
じゃあ弟さんの名前は、と。でも怖くて聞けなかった。
もしも、もしも私の知っている名前だったら。それを今、聞いてしまったら、
私は普通に挨拶をかわして店を出ていくことができるだろうか・・
「あの、町田さん?どうかしたんですか?」
「え?あ、いえ、きれいな名字だなって。ではこれで、おやすみなさい」
唐突に話を切り上げドアに向かう私に背後から小西さんがめずらしく
大きめの声をかけてくる。
「町田さん!お釣りお釣り!」
「あっ!忘れちゃった!」
二人で声をあげて笑った。おかげで凍り付いていた私の気持ちは瞬時に溶かされた。