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また桜は散り過ぎて
第12章 喜びは戸惑いへ

 帰り道、どんな風景を目にし、どんな音が耳に入ってきたのかまるで覚えていない。
ただ、喫茶・桜葉は明かりが落ちて真っ暗な姿だけは、見落とすことはなかった。
 小西さんと省吾さんは、兄弟だ。本人に確認していないけど、兄弟に違いない。
だって偶然おんなじ、が多すぎる。
省吾さんは桜葉、小西さんの母親の旧姓は桜葉、
二人とも子供の頃に両親の離婚を経験し、兄が父親と、弟が母親という組み合わせ。

 でも、仮にそうだとして、だからって私の気持ちは変わるの?・・・
変わるよ・・・だって、だって・・・
もしもどちらかと結ばれたとして、その後で二人が再会した時にどんな気持ちになるか。
三人がそれぞれどんな思いを抱くのか・・・
 体を震わせながら背筋を伸ばした時、バッグの中のスマホが振動を始めた。
急いで取り出すと、姉の瑞希からだった。
「もしもし、晴海?」
明るく懐かしい、姉の声。久しぶりに聞く。
「もしもし、ごめん、あとちょっとでアパートに着くから、こっちからかけなおすよ」
電話切って走り出す。大家さんちの門を通り抜けてすぐ、門柱の電気がふわりと消えた。




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