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水曜日の恋人
第1章 出逢い
「予算…」

「失礼ですが、お仕事は?
お給料の30%以内だと良いかと。
それ以上だと、生活を楽しめないですからね」

「あの…先日退職してしまって、
今、求職中なんです。
まあ、離婚の時の慰謝料とか諸々で、
手元には若干まとまったお金はありますが」

「なるほど。
ご事情がありそうですね。
お急ぎでお探しですか?」

「いえ。
あ、今、そこのホテルに連泊していて、
ロングステイタイプだからまあ、問題もなくて」

「ホテル生活ですか。
今、社員が出払っていて、
僕だとあんまり詳しくないので、
良かったら明日、もう一度いらしていただけますか?」
と言って、私に名刺をくれた。

「取締役社長!
社長さんだったんですね。
そりゃ、細かい物件とか、判らないですよね」
と言うと、
照れ臭そうに笑った。


「希望の最寄駅とか路線、
予算だけ、ここにメモしていただけますか?」と用紙を出したので、
あれこれチェックを入れたり、記入したりして、
最後に名前と携帯電話を記入した。

「現住所は、ホテルの住所?…」
と言ったら、

「あ、そこは空欄で構いませんよ」と言いながら、

「佐藤香織さんですね」と言って、
私を上から下まで見た…ような気がした。


「では、宜しくお願いします」とお辞儀して外に出た。


仕事については、
趣味が高じて資格も取っていたということで、
宿泊中のホテルとは別の、五つ星ホテルに入っている有名なフローリストでの仕事がほぼ決まりそうだった。

ブライダルの仕事が多いので、
土日か仕事になり、平日が休みになるらしい。
合わせて、引っ越ししたら新居で、
フラワーアレンジを教える仕事もしようと思っていた。
ダブルワークになるが、
忙しいくらいがちょうど良い。


その為にも、
仕事場の沿線で駅近、
女性が多いだろう生徒さんが足を運びやすい物件に住みたいな。


することもなくなったので、
ひとまず、ホテルの部屋に帰った。

英一たちは、再婚したんだろうか?
あの時6ヶ月といっていたから、
まもなく臨月なんだろう。

退職後は誰とも会わなくなった。
同僚たちの好奇の目に晒されるのも嫌で、
携帯も変えてしまった。
だから、英一たちのその後も知らなかった。


と、その時突然、携帯が鳴りだした。



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