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先輩!彼氏にしてください!
第4章 モデルをお願いします!
「それでね、どうしてもこの絵の作者に人物画を描いて欲しいって」
「人物画……?」
「そう」と言って、早坂先生はそばにある椅子に座り、僕の絵を見上げた。
「結構権威のある教授だよ」
そう言いながら、早坂先生が口にした大学名は確かに日本一と名高い美大だった。
「その教授曰く、この絵に『人』を感じるらしくってね」
「…………………」
「………その反応だと合ってるんだね。やっぱ教授はすごいなぁ」
ニコニコと笑いながら、早坂先生は話を続ける。
「回りくどいことをせず、直接『その人』を描いてみたら、すごいいい作品になるんじゃないかって、おっしゃってたよ」
「『その人』…──────」
脳裏に、いつもの麗しいほのか先輩が浮かぶ。
先生の話はまだ続くのだろうか。
もうすぐ休み時間になるから、もう戻らないと先輩のところに行く時間がなくなってしまう。
「君が思い浮かべた『その人』は、この世に実在する?」
「……もちろん」
「よかった。死んだ母親ですとか言われたら気まずいなぁとか思ってたから」
そう言って呑気に笑う。
こうしている間にも、窓の外からの水の音と笛の音がうるさい。
「ちょうどコンクールもあるし、さ。私もいい機会だと思うよ」
季節はもう夏になる。
この美術室の広いベランダから前を見下ろすとそこにはプールがある。
だから、この騒がしい音はきっとどこかのクラスがプールに入っているからで…─────
「───── あれっ…」
一人で考えていたところでハッとした僕は、思わず窓の方を見つめた。