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先輩!彼氏にしてください!
第5章 彼氏までの道のり ─ 序 ─
「うーん」と唸った先輩は、本を開く。
その姿が、あの日の先輩と重なって胸が苦しくなった。
「こんな感じ?」
「………バッチリです。かわいい……好きです」
「……はいはい」
溢れ出た想いをほのか先輩はいつものように、ひょいっと避ける。
別にそれでいい。
いつか彼氏になって、受け止めてもらうから。
「なんでこんなポーズがいいの?」
「僕が……ほのか先輩を好きになった素敵な瞬間、先輩はそのポーズをしていたので」
「え……?? つまり──」
「─── 入学式です」
イーゼルにキャンバスを置いた僕は、じっとほのか先輩を見つめる。
先輩は訝しげに眉を寄せて「は?」と声を上げていた。
「生徒会長として、新入生にお祝いの言葉を掛けてましたよね」
「う…ん………」
「あの時のほのか先輩に一目惚れしたんです、僕」
話しながらも当時の高揚を思い出す。
ほのか先輩が話し始めた途端、身体中の血がバッと沸いたみたいに熱くなって…
「………堂々としてかっこいいのに…なのに、綺麗でかわいくって…」
「あれは新入生に向けて話したの。谷川くん2年生じゃん」
「そんなの関係ないですよ」
そう言いながら、えんぴつを先輩に向けてかざす。
その後ろで、先輩が明らかに不機嫌そうな表情をしているのを見て思わずその場で立ち上がった。