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咲くのも、散るのも
第2章 花開くとき
その時、ポピーの花が、萌絵の脳裏をかすめた。
硬そうな黒い毛でおおわれたつぼみは、その重みで茎がしなってうなだれていている。次の瞬間、はち切れそうなつぼみがぱっくりとひび割れて、中に宿した深紅の花弁が膨らんで隙間からはみ出てくる。
つぼみが完全に割れ、その硬い殻が地面に落ちると、つぼみの下から現れた、目の覚めるような鮮やかな色の花がふわりと開く。
大きく開いた花弁は、透けるように薄く、はかなく、風をとらえて踊るように揺れるのだ。
萌絵はポピーの開花に自分の姿を重ねた。つぼみを固く閉じるのも、鮮やかに咲いて風に身をゆだねるのも、私の心ひとつで決まるのだと思った。
そして、拓海の大きな背中に手を回し、ぎゅっと力を込めた。
硬そうな黒い毛でおおわれたつぼみは、その重みで茎がしなってうなだれていている。次の瞬間、はち切れそうなつぼみがぱっくりとひび割れて、中に宿した深紅の花弁が膨らんで隙間からはみ出てくる。
つぼみが完全に割れ、その硬い殻が地面に落ちると、つぼみの下から現れた、目の覚めるような鮮やかな色の花がふわりと開く。
大きく開いた花弁は、透けるように薄く、はかなく、風をとらえて踊るように揺れるのだ。
萌絵はポピーの開花に自分の姿を重ねた。つぼみを固く閉じるのも、鮮やかに咲いて風に身をゆだねるのも、私の心ひとつで決まるのだと思った。
そして、拓海の大きな背中に手を回し、ぎゅっと力を込めた。