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ラストソング
第1章 出会い
スカバンドのキーボードの女の子がボソっと言った。


「洋平さんの彼女って…
何か激しいですよね?
バンド活動の邪魔になりそう。
あっ!ごめんなさい」


図星過ぎて何も言えない。


「まあまあ、色々あるんだよ。
男と女のことはね、当人同士しか判んないんだよ。
ほら。
飲みなよ。
お前たちのレコ発の打ち上げなんだからさ」と、
太郎さんがグラスに酒を注いだ。


飲みながら、
正直、家に帰りたくないと思ってた。

直子の部屋に転がり込んで3年か。
潮時かもしれない。



サポートメンバーのマークが、

「そろそろ俺、失礼します」と言って帰り支度を始める。


「ああ。お疲れ様。
良い演奏だったよ。
ありがとな」と握手を交わしてギャラの封筒を渡して送り出した。


「オールですよね?
元気ですね」


「タクシーも勿体無いし、
電車動いたら帰る感じかな?
また、金曜のライブで!」


レコ発ライブツアーといっても、
俺とリョウはサラリーマン兼業だから、
活動出来る日が限られている。
金土日しかライブ入れられない。

平日スタジオ練習やボイトレ入れて、金土にライブ、
日曜休みという生活がずっと続いていた。

それも、かなり疲れては来ていた。
何しろ、家に帰っても安らげないからだ。



その時、携帯が震え出した。
美和さんの名前に、緊張しながらも慌てて出てみたが、
店内がうるさくて声が良く聴こえない。

掛け直そうとして、店の外に出て、
ハッとした。


直子とマークが、腕を絡めるように歩いて行くのが遠くに見えたからだ。
立ち止まってキスしているようにも見える。

…まさかね。
だってマーク、確かまだ、ハタチそこそこだった。
直子は、35歳か、それ以上って言ってたし。


見間違えかなと思いながら、
リダイヤルした。


「あの。声、聴こえなくて」


「データ落としてたの。
LINE、気が付かなくて」


「もう、美和さんのこと睨みつけてた彼女、
帰っちゃったから、良かったら来ませんか?」


「そうね。
小腹が空いたから、夜食しに行こうかな?」


「待ってます!」


店内に戻って、太郎さんに、

「美和さん、これから来てくれるって」
と言うと、


「こんな時間に珍しいな。
じゃあ、ライブの感想を心して聞かないとな」と笑った。
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