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ラストソング
第10章 旅立ち
その日の夜、
珍しく美和さんから電話が来た。


公園で別れた後、
レンくんに、自分の結婚生活のことをなんとか話せたし、
俺との短い同居生活のことも話したと言った。

俺が、自分は欠陥品でもなく、
女性としてセックス出来ることを教えてくれたってことまで、
レンくんに言ったそうだった。

その事で、レンくんと上手くいかないとしても、
それは構わないとまで言っていた。

俺からもレンくんに話したことではあるけど、
オブラートに包んだっていうか、
そこまではっきりとは話さなかったから、
大丈夫なのかと心配してしまった。


レンくんは、公園から自宅に帰ったということだった。

もう、ここには戻って来ないと思ってるとも言ってた。

自分の話を聞いて、
そんな女は手に負えないと思われても、
それはそれとして仕方がないし、
音楽で繋がれていけるなら幸せだと、
美和さんは少し泣きながら話をしてた。


俺は心配になり、
「部屋に行こうか?」と言ったけど、

「大丈夫だよ?」と気丈にも笑う美和さんのことを、
心の底から抱き締めたいと思った。


その時、電話越しに、ピンポンと鳴る音が聴こえた。


「ちょっと待ってて?」と美和さんが言って、
パタパタと走る音が聴こえた。


そして、少しすると、

「鍵…レンくんに渡したの?
レンくんがね、ここに戻って来てくれたの。
大きい荷物とギター持って…」と震える声で美和さんが言った。


そして、少ししたら、美和さんの電話から、
「ちょっと変わってくれますか?」というレンくんの声が聞こえた。


レンくんは、落ち着いた声で話し始めた。

「洋平さん。
僕、今日から美和さんの処に住むことにします。
ちゃんとたくさんキスして、抱き締めて、
美和さんを大切にしますから、
安心してください」


「うん。美和さんを頼んだよ。
一緒に風呂とかも入って、
背中をマッサージしてあげると良いよ。
しかし、レンくん、童貞だもんな。
とにかく、全て、焦らずゆっくり優しくだぞ」


電話を奪った美和さんが、
「2人で何、言ってるのよ!?
じゃあ、洋平さん、
おやすみなさい!」と、美和さんは電話を切ってしまった。


その夜のことは、
どうなったのかは知らないけど、
多分、少しずつゆっくりと2人の初めての夜を過ごしたんだろうと思った。

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