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ラストソング
第2章 心機一転
「お昼ご飯は?」


「歌う前は食べないようにしてるんで」と言うと、


「じゃあ、軽くだね」と言って、
本当に上品なタラコと大葉の冷たいパスタを作ってくれた。

美和さんが大盛りで、俺のが子供用みたいな量だった。


「アスリートと同じだから、
バナナとかパスタなら、大丈夫でしょ?
何も食べないで夜までじゃね」と言いながら、
モリモリと気持ち良く平らげていく。


食器を下げるのを手伝って、
身支度を整えてると、

「はい」と言いながら、俺に鍵を渡した。
普通にコピー出来ないタイプのヤツだった。


「無くさないでね。
これ、コピーも出来ないし、
作り直したりするのも大変なのよ。
ほら、私が寝入ってたり不在の時に戻ってきたら大変だからね。
下の暗証番号はこれね」と付箋もくれた。


「14時過ぎてもベースのコ、来なかったら、
すぐに私に電話してね!」


そう言うと美和さんは、
「じゃあ、行ってらっしゃい。
私、自分の部屋で仕事するから。
あ、あの扉は決して開けてはいけません。
同じ家の中に居ても、携帯で連絡するようにね!
中で、機織りしてるからさ」

と言って、玄関近くの部屋に入ってしまった。


俺は無くさないようにキーホルダーに鍵を付けた。
さっきまでこれに直子の部屋の鍵が付いていた。
そのことが物凄く昔のことに思えて、不思議に感じた。


俺はギターと譜面や機材が入ったキャリーバッグを持って、
美和さんの家を出た。


「ベースのコが来なかったら」

美和さんの言葉通りになって、
寧ろ、気持ちが据わった。

美和さんに電話すると、
「判った」とだけ言われてすぐ電話を切られた。


リョウは動揺していて、
「どうしたんだろう?
電話も出ないし、LINEも既読にならないな」と言っている。


俺は2人に、
昨夜帰宅したら、
直子とマークが寝ていた話をして、
自分が直子の家を出たことと、
マークは今日だけでなく、ライブにも来ないかもしれないことを伝えた。


「えーっ!!
ライブどうすんだよ?
まだまだレコ発ライブ、続くんだぞ」と、
リョウは頭を掻きむしって怒鳴る。

いつも大人しくて優しいリョウからすると、
あり得ないほど激昂していた。


サクラは、
「誰かサポートで入れるヒト、探さないと」と言いながら、
携帯のアドレス帳を見始めた。




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