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ラストソング
第4章 戦闘開始
翌朝になってもLINEは既読にならなかった。
部屋に居るかどうかも判らないほど静かだったので、
LINEして出掛けた。

仕事の後、スタジオ練習の為に渋谷に向かった。
少し時間があったので、楽器屋に立ち寄ろうとしたら、
美和さんを見掛けた。

声を掛けようと思ったけど、
酷く急いでいるようだったので、後を追ってみた。

美和さんは、良くロック系のライブをしているライブハウスの前で立ち止まり、入り口の看板を見るとマスクを掛けて中に入って行った。

俺も看板を見て、時計を確認すると思わず続いた。


二重の重たい扉を開けると、爆音が聴こえた。
耳栓、今日は持ってなかったなと思い、
イヤホンを突っ込んでおいた。
中はうるさくて、しかも煙草臭かった。

ちょうどバンド演奏が終わり、
次のバンドがセッティングし始めてた。

客席を見廻すと、
1番後ろの端の処に美和さんはひっそり立っていた。


演奏が始まった。
荒削りなパンク系バンドだ。

長身で痩せ細ったドラム、ベースは非常に演奏が上手い。
紅一点のリードギターは話にならないくらい下手くそだ。
チューニングも酷い。
でも、キャラは立ってる。
そして、小柄なギターボーカルは…

なんていうか、度肝を抜かれた。
魂を掴まれるような声だった。

そして、シンプルなメロディラインだが、
歌詞がズバ抜けて良い。

正直、才能に嫉妬してしまうほどだった。
学生か、20代前半あたりなんだろう。


思わず、最後まで聴いてしまったが、
特に最後の曲は耳について離れなかった。


アンコール!
アンコール!

っていう声と手拍子が鳴り止まない。

ボーカルのコが出てきて、

「用意してないから、もう一度歌います」と言った。
それはそうだろう。

そのバンドは、出演する順番は前半であって、
そのライブのトリではない。

彼は、最後に歌っていた同じ曲を借り物のアコースティックギターで弾き語りした。


会場が静寂に包まれて、
誰もがその声に耳を傾けていた。

最後まで歌って、コードをジャランと鳴らして終わると、
物凄い拍手が起きていた。


美和さんを見たら、大号泣してた。



もしかしたら?
美和さんの想っている人って、
あの若い男の子なんだろうか?

そう思いながら、俺は急いでライブハウスを出ると自分の練習の為のスタジオに向かった。


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