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ラストソング
第5章 恋愛成就
打ち上げは、手羽先の店だったが、禁煙ではなくて美和さんが心配で気が気ではなかった。

でも、
「美和さん、喘息あるから、皆、煙草を控えて貰えないか?」と言っておいたら、
チェーンスモーカーのヤツまで煙草を我慢してくれてた。

美和さんは、楽しそうに打ち上げの様子もカメラに収めてくれてた。


対バンのベーシストに請われて、
カメラのディスプレイで彼らのバンドの写真も見せたりしていた。


「どえりゃ〜。あ、違った。
とてもカッコいいです」と言って、皆から笑われていた。


「メアド、くれたら、データで送ってあげるよ。
何かに使う時は、MIWAってクレジット入れてね」と笑ってた。



美和さんは不思議な人だ。
初対面の高校出たばかりみたいなヤツから30過ぎのオッサンまで、虜にして、相手を寛がせて会話を楽しんでいる。

ドラムのヤツには、机を叩きながら、
「あそこのトコ、こんな風にやったらどうかな?」なんて、
凄く細かい話をしたと思ったら、
その衣装、変だよと言いながら大笑いする。

その話の内容と、コロコロ変わる表情と言葉に、
皆が夢中になるのが判る。

ゲンさんが、「豆台風だから」と言ったのを思い出して、
妙に納得した。


暫くすると、少し離れた席に移動して、
美和さんはサクラと2人で、頭をくっつけるようにして話を始めていた。

男たちは、俺に、
「美和さん、凄えな。
なんかさ、スタジオ行きたくなってきた」と口々に言う。

「ライブの前にさ、手を繋いでたよな?
洋平、美和さんと付き合ってるの?
なんか、許せねえ!」と、首を絞めようとふざけるヤツも居た。


「なかなか、落とせなくてさ。
俺なんか、手の平の上で転がされてるよ」と嗤うと、

「美和さんになら、俺、手の平で転がされたいよ」とボヤくヤツも出る。


「ぼやぼやしてると、誰かに拐われるんじゃないか?
あんなに可愛いんだぞ。
幾つくらいかな?」


「さあ、訊いたこともないけど。
歳なんか関係ないよ」と俺は言った。


高校出たてのガキまで、
「歳なんて関係ないなら、
俺でもいけるのかな?」と言うのを聞いて、
全員が、
「100万年、早いんだよ」と言って、
頭をコツンと叩いて笑った。


「歳なんか関係ないなら…
レンに拐われることもあるんだな」と心の中で引っ掛かっていた。
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