この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
ラストソング
第6章 一騎討ち
「あの…美和さんですよね?
いつも僕の名前で入場してくれてる美和さん」


美和さんは、黙って頷いているようだった。


「いつも、ありがとうございます。
誰だか判らなくて、受付のヤツに訊いたら、
小柄な女性だって言われて」


「殆ど毎回、ライブに来てくださってますよね?
あの…公園の練習にも来てくれたこと、
何度かありましたよね?
髪の毛濡れてて、どうしたんだろうって思ってたんです」


「乾かすの面倒くさくて。
そのうち乾くから」
ようやく美和さんは声を出してる感じだった。


「あの…良かったら、
感想聞かせてください。
お願いします」
と、レンくんは頭を下げる。


美和さんは、とても喋れそうにないような顔をしてる。


「ごめんなさい」と声を振り絞るように言ったようだったけど、
レンくんは爆音でのライブが終わったばかりのせいか聴き取れなかったみたいで、近づきながら、
「えっ?」と言った。


美和さんは、レンくんの手をギュッと握ると、

「ごめんなさい。
まだ歌の余韻が抜けてなくて、
上手く喋れそうにないの。
あなたの曲は…
心を鷲掴みにして揺さぶってる感じで」


「あの…震えてますけど、大丈夫ですか?」と、
レンくんは心配そうに言った。


「好き。
それだけじゃ言い足りないけど、
あなたの歌は…」

美和さんはボロボロ泣いているようだった。


レンくんは後ろポケットからバンダナを出して、
美和さんの涙を拭いてた。

美和さんは涙を拭きながら欧米人みたいにそれで鼻をかむと、

「ああ、ごめんなさい。
感想なんて、今はとても話せない。
今度、公園に行けたら。
これもお洗濯して返すね」と言って頭を下げると、
小走りで駅に向かってしまったようだった。


レンくんは、走り去る美和さんの後ろ姿をずっと見ていた。
そして、美和さんに握られた左手をそっと見て、
その手を大事そうに右手で撫でてから、踵を返してこっちに向かってきた。


俺とすれ違う時、あれっていう顔をして、
会釈をした。


「さっき、ライブハウスの入り口の近くで聴いてくださってましたよね?
ありがとうございました」と頭を下げた。


「良い演奏だったよ」とだけ何とか言って、
俺も駅の方へと向かった。








/111ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ