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ラストソング
第6章 一騎討ち
家に帰ると、美和さんはまだ帰宅してないようだった。
あんな不安定な様子だったので、心配になってしまった。


「ちょっと出掛けて戻りました。
美和さん、まだ外出してますか?」とLINEしたけど、
すぐに起動にはならない。


ふと思いついて防音室のドアをノックしてからそっと開けてみたら、
美和さんがレンくんの曲を弾きながら歌っていた。
しかも、泣きながらだ。


「美和さん、どうしたんですか?
大丈夫ですか?」と言うと、
首を振って泣きながら、

「私、やっぱり、レンくんが好き。
曲が好きなのか、歌声や演奏が好きなのか、レンくんのことが好きなのか判んないけど、
レンくんのことを考えただけで涙が出たり、震えたりするよ」と言う。

俺は美和さんを抱き締めた。
美和さんは震えながら泣いている。
すごく自分が無力な存在だと思った。


「でも、馬鹿みたい。
だって、物凄く歳、離れてるし、
この感情が恋だとしても、
何も始まらない」
と言う。


「洋平さんだってそうだよ。
私と一回り、違うんだよ?」


「俺、美和さんの年齢、知らないけど、
別に年齢なんてどうでも良いと思ってる」


「聴いてた音楽も、子供の頃に観てたテレビだって、違うんだよ?
そんなんで、一緒に居れるはず、ないじゃない?
おまけに、子供だって産めない。
私なんて、何の価値もないわ」と言って、号泣してる。


「美和さん、疲れてるんだよ。
仕事終わってるなら、一緒に寝よう?
シャワーはした?
まだだったら、一緒に風呂に入ろう」と言って、ギターの弦を緩めてケースに収めて、
座り込んでる美和さんを抱き上げて浴室まで連れて行った。


バスタブにお湯を張りながら、
「はいっ」と歯磨き粉をつけた歯ブラシを渡して、
2人並んで歯磨きをした。

そして、シャワーで美和さんの身体を洗い、目に泡が入らないようにシャンプーしてからトリートメントをつけて流してあげて、
バスタブに入るように促した。

俺も急いで身体を洗ってシャンプーして、バスタブに入った。

後ろから美和さんを抱き締めるけど、
美和さんはまだ、泣いてるみたいだった。


もしかしたら、ちゃんとレンくんと言葉を交わしたのも初めてだったのかもしれない。
そして、美和さんのレンくんへの想いを目の当たりにして、
俺は不安になっていた。
俺、勝てるんだろうか?

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