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ラストソング
第6章 一騎討ち
「あの。
凄く嬉しいお話で、さっきまでは有り難く引き受けようと思ってましたが、さっき、うちのバンドからリードギターが脱退したんで、
ライブ自体、出来るかどうか…」


「うちとおんなじだよ」とリョウが笑った。


「サポートメンバーだったベースがさ、
スタジオ練習に連絡もなくバックれて、
どうなることかと思ったら、
美和さんが強力なサポートメンバー紹介してくれて、
何とかツアー成り立ってるんだ」


「リードギター出来るヤツ、居ないのか?」


「あんなギターよりはマシなヤツ、居るだろう?」
と言うが、
レンくんは下を向いたまま考え込んでいた。


ベーシストが、
「うちのバンド、スタジオ練習も多くて、レンの歌についていくのも大変だからな」と笑う。


「何よりも、レンの曲に惚れ抜いてないと、演れない」と、
物静かなドラムも言った。


その時、俺は多分、
どうにかしてたんだろう。


「美和さん、ギター弾けば良いんじゃない?
レンくんの曲、死ぬほど好きなんでしょ?
こないだ弾き語りしてたけど、凄かったし、
リードギター弾くのなんて、
お茶の子さいさいでしょ?」


「えっ?
美和さん、ギター弾くんですか?」と、
レンくんがビックリして言った。


「俺なんかより、遥かに上手くて卒倒しそうになったからな」


「そうだよ。
この前なんて、サポートのベーシストさんがリハに間に合わない時、
代わりに弾いてくれたけど、
ビックリする程上手くて!
ベースも普通にレベル高かったよな」とリョウも言った。


「ダメだよ。無理」と美和さんが言った。


「えっ?なんで?」
そんなことを言う俺は、本当に意地悪だったと思う。


「好き過ぎて、冷静な演奏、出来そうもないから」と、
美和さんは涙ぐんでしまう。


レンくんが美和さんに頭を下げて言った。


「僕、美和さんにお願いしたいです。
3週間後のライブと、
ブッキングしちゃってて、断れないライブの分、
サポートして貰えませんか?
スタジオ入ってみて、どうしてもダメなら、
リードギター抜きで、僕がギターやって歌います」


美和さんは、唇を噛み締めながら、下を向いていた。


「次のライブ、いつ?」

「来週の水曜。池袋です」

「スタジオ練習は?」

「美和さんに合わせます」とレンくんが言うと、
リズム隊の2人も頷いた。

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