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ラストソング
第1章 出会い
自分達の演奏は、
ほぼベストに近いパフォーマンスに思えた。

2回目のアンコールに応えて舞台が暗転して幕が降りて横を見ると、
舞台の袖で美和さんがグッドマークを指で出しながら笑っていた。


駆け寄って感想を訊きたかったけど、
レコ発主催の身なので、
出入り口近くのロビーに行き、
まだCD買ってないお客に販売と握手をして、見送りをした。

その後、急いで着替えて楽器と器材を片付けて、楽屋やステージ、ロビーなど積み残しないかチェックして回った。


ふと見ると、ロビー横のバースペースのカウンターに美和さんが座っていた。

物凄く真剣な眼差しで、マックのディスプレイを見ていた。


「良かったら、打ち上げ行きませんか?」と声を掛けたが、
こちらを見ることもなく、反応もなかった。

よく見ると、両耳にイヤホンをつけていた。


近くに行ってみると、ディスプレイには自分の画像が載っていた。
1枚1枚チェックしているようだった。、

思わず俺は、一緒にディスプレイを覗き込んでいた。


すると突然、片方の耳にイヤホンが突っ込まれた。
俺の曲が流れていた。
今日発売のCDを聴いててくれてたことが判った。



「このラストの曲が1番好き!
それなのにね、チューニングが狂ってた。
弦、今日張り替えたでしょ?」


「あっ。
リハの時、1本切れちゃって張り替えました」


「やっぱりね。
そういう時は、1曲ごと、
なんなら間奏中も何度もチューニングしないとダメよ」


「はい。スミマセン。
あっ!打ち上げ、行きませんか?」


「行かない」


「えっ?」


「だって、あの女の人、
鬼のような顔で睨んでるんだもん」と小さく笑いながら言った。


「画像、どうします?
圧縮ファイルで送るなら、メールアドレス欲しいけど、
これ以上睨まれたくないから、ここにメールして!」と、
俺に名刺を渡した。


そして、太郎さんに、

「お疲れ様でした。
画像は良いやつセレクトしてから、
圧縮ファイルで送るね」と言うと、
パソコンとカメラを仕舞い始めた。
三脚や脚立みたいなものまであった。

小柄で華奢な美和さんが持てるんだろうか?という大きさの荷物だった。


「打ち上げ、行こうよ」と言われていたが、
「うーん。カメラあるから」とそっちにも断っていた。


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