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ラストソング
第6章 一騎討ち
スタジオに着くと、既にレンくんがエントランスのロビースペースに居た。

「あれ?洋平さん、どうしたんですか?」

「今日は、美和さんのローディーしてた」と笑った。

「良かったら、聴いていきませんか?
美和さん、凄いんですよ。
もう、ずっと一緒に弾き続けたいくらい」とレンくんが言うと、
美和さんは下を向いて耳を紅く染める。


「でも、邪魔じゃないかな?」と美和さんを見て言うけど、
美和さんは、
「私はサポートメンバーだから、決めるのはレンくん」と言って笑ってる。


「オープニングアクト、やらせて貰うから、
時間あるなら聴いて欲しいです」と、
真っ直ぐ俺を見て言うので、

「じゃあ、遠慮なく」と言った。


あんな真っ直ぐなキラキラした目で見つめられたら、
美和さん、イチコロかもしれない。

本気でそう思った。
何で俺、美和さんとレンくんを近づけてしまったんだと、
本当に自分の馬鹿さ加減を呪った。


ドラムとベースも来て、スタジオに入ると、
それぞれチューニングを始めたり、エフェクターを繋げたりする。

ベースと美和さんのギターがAの音を合わせて、
それにレンくんのギターも合わせていく。

美和さんは、チューナーを使わず、耳とハーモニクスで合わせてる。


レンくんが曲名を呟く。

ドラムがカウントを出して、演奏が始まる。


3回行ったライブとはアレンジをかなり変えているのが判った。

どちらかと言えば、ギターよりベースを目立たせるようなアレンジで、
ギターソロ以外は比較的美和さんはおとなしく弾いていた。


もっとエモーショナルな演奏をしていると想像していたから、正直驚いた。


「どうですか?」とレンくんに訊かれて、

「正直、おとなしくて驚いた」と言った。


「…そうですよね」と、レンくんも言う。


「美和さん、もっと感情出しちゃってください」とレンくんが言うと、
美和さんは困った顔をする。


「ダメだよ。
そしたら、私、号泣しちゃって、
演奏どころじゃなくなるもん」


すると、おとなしそうなドラムが言った。

「演奏どころじゃない演奏なら慣れてるし、
そこが崩れないようにリズム隊居るから。
美和さん、ギター自体上手いし、
安心して、感情剥き出しにしてください。
そうしないと、レンの歌も、お行儀良くなっちゃって、
面白くないから」と言った。
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