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ラストソング
第7章 大阪の陣
「バンドの今後を考えないと」という美和さんの声が、
グルグル頭の中で回っていた。

俺は、
「そっちもハッピーな話だよ。
おめでとう!」と言ったが、
リョウは、「バンド、どうしようか?」と言った。


「まずは、最後の東京ライブまで、全力でやって、
その後、考えよう。
サクラは身体に気を付けろ。
ここ、煙草臭いから、早く帰って休みなよ」と言った。


サクラを送ると言って、リョウもホテルに戻ることになったから、
俺が1人で対バンとファンの対応をすることになった。


酔った女の子が、しきりにボディタッチをしてくるが、
俺は考え事をしていて、あんまり気付かなかったら、
怒って席を立ってしまったらしい。

ベーシストの友達が、
「なんや。ノリ悪いで」と言うが、
バンドの行く末を考えると、
一気に酔いが醒めた心地がした。


「悪い。俺、酔いすぎたから宿に戻る。
スマン」と言って、多めにお金を渡して、

「なんか風邪っぽいのに飲んでたら調子悪くなっちゃったんで、
お先に帰ります。
ホントにごめんなさい」と頭を深く下げて店を出た。


タクシーに乗ってホテルの名前を告げた。
俺には不釣り合いな立派なホテルだったが、
気にせずフロントに声を掛けた。


「お連れ様はまだ外出されてるようですね。
おやすみなさいませ」とカードキーを渡された。


部屋に入ってシャワーを浴びて歯磨きして、水を飲んでからベッドに横になった。
今回はツインルームになっていた。

俺はそのまま、灯りもつけたまま眠っていた。



何時かは判らないけど、遅い時間に美和さんが部屋に入ってきた。
歯磨きしてシャワーを使う音がしてた。

そして、横のベッドに静かに潜り込むと、
小さい声で「おやすみ」と言って、
部屋の電気を消した。


俺は覚醒してるのに、身体も動かせず、
声も出せなかった。


すぐ隣に美和さんが居るというのに、
何も出来ない。

もどかしくて、焦ったいけど、
身体が鉛のように重たかった。


朝の光が窓のカーテンの隙間から入ってきてた。
昨日の身体の重さは嘘のように消えていた。

美和さんは、あどけない顔で寝ている。


俺は美和さんのベッドに潜り込んで、美和さんを抱き締めてキスをした。
そして、もう一度微睡んだ。

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