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ラストソング
第9章 新たな挑戦
レンくんがおずおずと腕を回すのを見て、
「違う。
もっと強く抱き締めるんだ」と言った。


両手でしっかり美和さんを抱き締めるのを見て、
「美和さん、俺から話しても良い?
元旦那の酷い話」


美和さんは首を横に振って、
「話すのは自分でする。
話せるかどうか、判んないけど」と言った。


レンくんは、静かに
「話したくないことは、無理して話さなくて良いよ。
こうやって美和さんを抱き締めていられるだけで良いと思う。
僕は無力で、何も出来ないかもしれないけど、
努力したい」


「努力か。
じゃあ、まずは抱き締めて背中を撫でて、
キスしてセックスすることだよ」と、俺はウィンクしてみせた。


「あの僕…
したこと、ないんですけどね」


「ええ?
バンドマンでギターボーカルやってて、
それは無いだろ?
大学生の時とかは?
キスしたことぐらい、あるよな?」


「キスしたら下手くそって、罵倒されたことならあります」


「美和さんとも?」


「美和さんは…
可愛くて、尊過ぎて…。
どうして良いか判らないくらいで」


「もう、2人ともやめて!」


「ああ、ごめんごめん。
あのさ。
ちょうど良いかもよ?
美和さんだって、殆ど経験無いのとおんなじだし、
レンも童貞なら、
2人で少しずつ、愛し合っていけば良いよ。
レンにアドバイスするとしたら、
とにかく、ゆっくり、優しくだよ。
手を繋いでいるだけでも、ハグしてるだけでも良いから、
美和さんを包み込んであげて。
そんでもって、沢山キスしてあげて。
良いな?」


俺は、立ち上がってレンくんの肩を軽く叩いた。

「じゃあ、俺は帰るよ。
あとは、2人で話をすると良い.
話をしなくても、抱き合って丸まって寝れば良いよ。
おやすみ」


そして、美和さんの額にキスして、
「次に会う時は、
社長と所属アーティストだな。
でも、親愛の気持ちのハグと額へのキスくらいは、
これからも許して欲しいな。
そうしないと俺、
死んじゃうよ」とウィンクした。


美和さんは涙ぐみながら、
俺の首に腕を回してハグすると、
「洋平さん、ありがとう」と言って、
両頬にキスをした。


そして、2人を残して部屋を出た。

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