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Memory of Night 2
第8章 蛍の思い出
最近ずっと幸せな夢ばかり見ているような気がする。
そこまで頻繁に夢を覚えているわけではないが、晃と付き合い始めてからは満たされた気持ちで目覚めることが増えたように思う。
ーーだから喪失感を伴う夢は、とても久しぶりだった。
宵は幼い頃の夢を見ていた。
ゆらゆらと、黄色い光が漂っている。最初は一つだったそれが、ぽつ、ぽつ、と増えた。無音だった闇の中に、徐々にいくつもの音が紛れ込んでくる。虫の声と、川が流れる水音と、遠くから聴こえる打ち上げ花火。
光は蛍だった。
宙を飛びながら、ちりちりと点滅するように淡い光を放っている。
どうして虫が光るのか、それが不思議で仕方なかった。捕まえようと伸ばした宵の手を、蛍はひらりと交わしてしまう。
漂っているだけなのに、なぜ触れられないのか。どういう仕組みで光るのかが知りたくて夢中で追いかけていると、右手首を誰かに掴まれた。それすら振り払い、蛍が集まる場所に向かって走る。
「ーー宵っ!」
がなるように名前を呼ばれ、同時に今度は腕の辺りを思い切り掴まれた。先ほどとは比べようもない強い力で、無理矢理振り向かされる。
そこには見慣れているはずの姿があった。