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Memory of Night 2
第50章 episode of 0

 夕暮れ時。空は綺麗な橙色に染まっていた。
 昼を作れなかった代わりに夕飯を作った。そうしたら、いい時間になってしまった。一緒に食べてく? と誘われたが、秋広はそれを断ってしまった。
 桃華のアパートを去った秋広は、一人とぼとぼと自分の車に向かう。
 なんとなく足が重かった。その原因に思い当たるものがいくつかあったが、決定的なのがどれかはわからなかった。
 桃華自身のことをたくさん聞くことができた。大切な妹のこと。両親との価値観の違い。故郷を飛び出してきた理由。
 知らない一面を知ることができたことは嬉しくもあり、同時に彼女の生き方が心配でもあった。
 自分の娘が家を飛び出したまま連絡もせず帰ってこなかったら、大騒ぎになりはしないだろうか。捜索願いなど出されはしないか。
 だが、桃華のことを案じる気持ちとはまったく別の類(たぐい)のマイナスの感情もあった。
 秋広は車の前で立ち止まり、小さくため息をついた。
 ーー見合いや結婚が嫌だった。
 そんなふうに話していた桃華の横顔が脳裏によぎる。
 胸が締め付けられるようなこの感情が何かくらいは秋広にもわかったが、どうしたらいいのかはわからなかった。そんな経験は人生の中で一度もない。
 おんぼろなアパートを見渡しながら芽生えた強い衝動のような何か。
 秋広はその気持ちを振り払うように何度もかぶりを振り、車へと乗り込んだ。
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