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Memory of Night 2
第8章 蛍の思い出

 けれど彼女の不器用な優しさは嬉しくて、まったくやり方は違っても、自分の子供として接しようとしてくれているのは伝わった。それはもう痛いほど。
 志穂のそばは気付けば宵にとって、居心地のいい空間になっていた。不思議なことに、そうなればなるほど両親の夢は見なくなり、思い出すことすら減っていった。

「……いって」

 宵は寝返りを打とうとして、腰の痛みに思わず顔を歪めた。腰だけじゃなく、体の節々が鈍く痛む。おまけに全身怠かった。
 まず間違いなく昨夜のセックスのせいだろう。まったく容赦がないにもほどがある。晃は人をサイボーグか何かと勘違いしてるんじゃないかと思う。
 そこで宵はある違和感に気付いた。
 いつも隣にあるはずの温もりが、感じられなかったのだ。
 無理やり身を起こしてベッドを見ると、晃の姿がなかった。

「晃?」

 小さく呟き部屋のドアを見やる。わずかながらに灯りが漏れていた。
 蛍光灯ほど明るいわけではないので、おそらくスタンドライトだろう。よく晃が勉強をする時に使っている、手元のみを照らライトだ。
 そう思った瞬間、ある光景がフラッシュバックした。
 直前の夢とリンクし、思考が再び遠い昔に引き戻される。
 あの祭の日の少し後。真夜中に隣から漏れる小さな灯り。ベッドを抜け出し隣の部屋を覗くと、桃華だけがいた。 桃華は珍しく浮かない顔をしていて、何か紙のようなものを見ていた。宵に気付くと手招きし、おもむろにその体を抱きしめた。

「ーーおまえさ、あたしとパパが別々に暮らすとしたら、どっちと一緒にいたい?」

 何もかもが唐突だった。遠い記憶の底から聞こえてきた声に、宵は小さなため息を返した。
 ーーせめて綺麗な記憶だけ思い出せたらいいのに、と思う。

「……結局どっちもいねーじゃん」

 低く呟いた声は、ただ闇に吸い込まれただけだ。
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