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Memory of Night 2
第9章 臨時ポールダンサー
「ーーやあ、宵くん。今日も綺麗だね。この前は残念だったなあ、やっと君を縛れるチャンスだったのに」
「……いらっしゃいませ。本当に、いつもお店に居ますね」
宵は出勤して早々中年の男ーー土方に声をかけられ、そっとため息をついた。本当に、毎回いる。このバーにいったいいくら金を落としているのか気になるくらいだ。
「毎日じゃないよ。君がいる日に会いに来てるんだ」
「ストーカーみたいですね」
「……ストーカーは酷いな。最近本当に冷たいね」
土方は顔を曇らせ、肩を落としてみせた。本気でショックを受けているような態度に、ちょっと言いすぎたかなと思わないでもない。
毎回話しかけられるのは正直ウザかったが、一応客なのだ。
「すみません、冗談ですよ、いつもありがとうございます」
宵はトレイに何種類か乗ったドリンクの中から赤みがかったオレンジ色のドリンクを一杯、土方が座るテーブルに置いた。
イベントの日以外はサービスで配ることはないが、暇な時はこうして酒を持って席をまわり、声をかけながら売っていく。
ビールもあったが、土方が外見に似合わず甘いカクテルが好きなことも把握していた。
「カシスオレンジです」
「おお、王道だね。ありがとういただくよ」