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Memory of Night 2
第9章 臨時ポールダンサー
土方の顔がにこりとなる。
普段は鬱陶しいが、そういうゲンキンなところは嫌いではなかった。
会釈をして立ち去ろうとする宵に、思い出したように土方が言った。
「そういえば、ハルちゃんにまた緊縛体験のイベントをするから出てくれないかと言われたんだが、今度こそ私のパートナー役で縛らせてくれるかい? 火曜日は、変更になっちゃったからね。せっかく君がOKしてくれたからあのイベント引き受けたのに、本当に残念だったよ」
「……え?」
土方の言い方に違和感を覚える。
ずっと前から自分が土方の相手役を了承していたような口ぶりだ。了承なんてしていないし、そもそもあのイベント自体当日知らされたのだ。
「というより、ハルちゃんから持ちかけてきた話なんだけどね。宵くんを縛ってもいいから、実演会の講師として前に立ってほしいって」
(あの女……)
聞いていた話と全然違う。宵は春加の済ました顔を思い浮かべ、思わず舌打ちしそうになってしまった。
火曜日の鬼電に折り返すんじゃなかったと、後悔が襲う。
人が足りないから出てくれというのもそもそも嘘だろう。
「ん? もしかして、聞いてなかったのかい?」
「いえ、ちゃんと聞いてましたよ。また機会があったら、縛られ役も考えておきます。では」
宵は頭を下げ、今度こそその場をあとにした。