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Memory of Night 2
第3章 甘い遊戯
「ーー……い」
最初はとても遠くから聞こえた。たとえば湖の底から、水泡と共に運ばれてくるような。
「宵、ねえ、宵ってば」
やがて自分の名前を呼ばれていることを理解する。
「あっさでーすよー」
歌うように目の前の主は言う。それが誰かもすぐにわかった。晃だ。
「まったく、しょうがないなあ……」
やれやれとつぶやく声は、いたって穏やかだった。
気配が遠のいた瞬間、まばゆい光。カーテンを開けたらしい。陽光の眩しさに、反射的に毛布を手繰りよせて宵は自身の顔を覆った。
「お目覚めですかね、お嬢様」
「……まだ覚めてない」
「起きないと全裸にするよ」
「なんでだよ」
低音で囁かれ、思わずかぶった毛布を剥いでしまう。
予想通り。そこには甘いマスクをかぶった恋人の顔があった。
「おはよう。早く着替えて、朝ごはんにするよ」
そう言う大西晃(おおにあきら)はすでに、高校の制服に着替え、髪も整えてあるのだった。