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Memory of Night 2
第10章 嫉妬
雨は晃が予備校から帰る時間になっても、弱まる気配を見せなかった。
(あれ、まだ宵帰ってないのかな)
傘を畳み、アパートのドアノブを回し首をかしげた。宵はいつも、晃より先に帰宅した時は鍵をかけないで待っていることが多い。
だがドアの鍵はかかったままだ。鍵を開け中に入るが、部屋は真っ暗だし、宵がいつも履いている黒いスニーカーもない。
晃は腕時計を確認した。すでに十時半をまわっている。
(遅いな)
ハプニングバーのアルバイトは九時半までのはず。忙しくて長引いてるんだろうか。
疑問に思っていると、背後から車の走行音が聞こえた。振り向くとちょうど赤いスポーツカーがアパートの前に横付けするところが見えた。すぐに春加の所有車だとわかり、晃が駆け寄る。
助手席側のドアが開き、制服姿の宵が出てきた。
「おかえり。今日はずいぶん遅くまでーー」
晃は宵が濡れないよう、頭上に傘を開いてやりながら声をかけた。その声が、途中で途切れる。
宵は車から降りた瞬間酷くふらつき、晃の胸元に寄りかかってきた。
「……宵?」
あからさまに具合が悪そうだった。傘を持つ手とは逆の左手を宵の背に回し、その体を支える。