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Memory of Night 2
第10章 嫉妬
宵からは、苦しそうな声で一言だけだった。
「……ごめん、吐きそ……」
「ーーえ?」
覗き見た真っ青な顔に驚く。そのまま晃の胸を押しのけ、部屋へと駆け込んでいってしまう。
「宵……っ!」
「大丈夫だよ、ただの車酔いだから」
運転席から聞こえたのは春加の声だった。同時に学生鞄を手渡される。助手席に置いていった宵のものだ。
「……車酔い? そんなの今までしたことないでしょ?」
「雨、だったからじゃない?」
晃は春加に鋭い視線を向けた。
よく見ると、春加の服装も露出が多く先日の雰囲気と全然違う。
「……バイト、九時半までですよね? こんな時間までどこにいたんですか?」
高ぶりそうになる声を抑えようとすると、自然と低くなってしまう。抑揚の乏しい声色で晃は春加に問いかけた。
「ラブホテル」
うっすらと笑み乗せ、春加が答える。
晃の傘を持つ右手に思わず力がこもった。
「……へえ。それが本当なら、ハル姉を警察に突き出さないといけなくなりますね。高校生のあの子に手を出したなら」
「あっちから誘って来たんだけどね。晃に内緒で一回ヤろって」
「は」
喉の奥で笑いが漏れる。