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Memory of Night 2
第3章 甘い遊戯

「え? うそ、わかる? ちょっと毛先切ってすいてもらっただけよ? クラスでも二人くらいしか気付いてなかったのに」
(やっぱり)
晃の得意技、『褒める』。甘いマスクと巧みな褒めで女子の心を掴むのだ。
「さすが、生粋(きっすい)の女好き。すげー観察力」
宵が拍手を贈ると、明は大爆笑だった。
昔の晃であれば、このまま相手を褒めちぎり、熱い眼差しを注ぎながら口説いてしまうのだろう。そんな様子が容易く想像できた。
晃の思惑通り、明の興味は二人の登下校から髪のことに逸れたらしい。上手くごまかせてほっとしていた宵だったが、明は次の瞬間、今までの話題とは比べ物にならないほどの大きな爆弾を投下してきた。
「ーーそう言えば宵。話飛ぶけどさ、歳上の彼女できた?」
無邪気なその問いに、宵は凍りつく。
「赤いスポーツカーに乗った女性と付き合ってるでしょ? 姫橋(ひめばし)公園の辺りで、よく乗り込んでる姿が目撃されてるよ。すごいね、どこで知り合ったん?」
明は恋バナのノリで聞いてくる。宵は何も言えず、一人頭を抱えたくなった。
(なんで今なんだよ……)
別のタイミングであれば、いくらだって答えたのに。よりにもよって晃が隣にいる時に。
「……へー、初耳」
晃の声は心なしか冷ややかだったが、怖くて振り向けなかった。

