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Memory of Night 2
第13章 投影

最初はスローテンポな曲だった。ゆっくりと客たちのテンションを引き上げていってくれるような、ジャズ調のものだ。春加はまだポールには上らず、ステージ上で演技をする。
しなやかに身体が折れるたび、腰に巻いた布が舞う。まるでレースのスカートのようだ。彼女がくるりとまわると太ももが露になる。ステージの照明に照らされ、衣装に散りばめられた銀色のラメが輝いていた。
純真さと色香と華やかさ。本来なら相容れないであろうコンセプトが調和して、不思議な魅力のあるステージだった。
仕事も忘れ、宵もすっかり彼女の演技に見いってしまっていた。
「ーーお疲れ様」
ふいに労(ねぎら)いの言葉と共に、目の前にグラスを差し出される。細長いカクテルグラスの中で、青色の液体が揺れていた。
「もちろんノンアルだから、安心して」
「……頂いていいんですか?」
「うん。今日は忙しかったから、たくさん働いてくれたスタッフさんたちに僕からサービス」
そう言って、亮は笑った。
「ありがとうございます」
グラスを受け取り、宵も頭を下げた。
ショーが始まれば、ドリンクや料理の注文は止まる。客たちがステージに集中するからだ。いつもなら、このタイミングでサービスのドリンクを配るのだが、今日はそれもいいと言う。

