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Memory of Night 2
第13章 投影

確かに行けと言われても、歩きまわるスペースがないほどフロアは混んでいた。ソファ席は埋まり、増やした立ち見用のテーブルにも人が群がっている。
宵はカウンター横の壁際、フロアからはちょうど死角になる場所で、渡されたノンアルコールのカクテルを一口飲んだ。フルーティーな香り。昔居酒屋で働いていたことがあったから、代表的なカクテルなら知っていた。
おそらくライチ風味のチャイナブルーという種類だ。
カウンターの中でも、スタッフ達がステージを眺めながら飲み物を口にしていた。
亮も同じく隣でステージを眺めている。
宵はちらりとその顔を見上げ、話しかけた。
「これ、すごく美味しいです。……一つプライベートなこと聞いてもいいですか?」
「口にあったようで良かったよ。何かな? プライベートなことって」
おっとりとした口調で亮は言い、宵を振り向いた。
カウンター内や厨房は明るいが、亮はそことは反対側にいる。
「ーー春加さんと付き合ってたんですか?」
そのためぴくりと反応した気はしたが、表情までは見えなかった。
「なんでそう思うんだい?」
「煙草の銘柄が一緒だったし、吸うときの仕草も似てたんで。あとは……なんとなくです」

