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Memory of Night 2
第17章 台風接近
それはそれで、友人に同情が湧かなくもない。
「よく来たな」
「来たけど、朝だからかマジで機嫌悪くて、ほとんど口利いてくれなかった気がする」
「……その状態で最後までメイクできるおまえのメンタルがやばいな」
「あったりまえじゃん、文化祭のためだし! 殴られたって最後までメイクするわ」
明はガッツポーズを作った。
大山は苦笑する。クラスの誰よりも、イベント事に一生懸命なところ。
それが伝わったからこそ直前まで逃げていた宵も鬼役を観念して引き受け、疲労で体調を崩した明に景品の温泉旅行まで渡しのだろう。
大山自身も、明のそういう部分は好きだ。もちろんそれだけではないが。
ふいにその気持ちは、コップに勢いよく注がれた水のように大山の心の中で溢れた。
「ーー明、俺」
そのままの勢いで言葉にしようとした瞬間、明が声をあげる。
「やば、忘れてた!」
「え?」
「ちょっとあたし別のことしなきゃだった、窓の補強よろしく」
「なら俺も……」
宵に手分けすんなと言われていたし、なんとなく悪い予感がして大山も明のあとを追おうとした。
「ストップ!」
だが明に、勢いよく止められてしまう。
「すぐ戻るから大山は窓お願い。ごめんね、よろしくー!」
駆け足で部屋を出ていく。引き留める隙もないほど軽やかに。
なんとなく胸騒ぎがした。先ほどまでの懐かしさとは正反対の不穏な気持ちがしていた。まるでそれを助長するかのように、台風による風が、一層強く吹きすさんでいた。