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Memory of Night 2
第18章 人魚姫

さすがに人はいなかった。昼間の賑わいが嘘のように夜の海は不気味で、まるで別の場所のようにも感じられる。
「暗……」
明はこっそりバックに入れてきた懐中電灯をつけ、足元を照らしながら歩きづらい岩場を進んでいく。時折立ち止まり、海面を照らして浮き輪を探した。
波は想像以上に激しかった。勢いよく押し寄せて、岩場に打ち付けるたびに水しぶきをあげる。
「冷た……っ」
昼間と一緒のサンダルだったため、剥き出しの肌にしぶきがかかる。冷たさに驚いた。
(もうちょっと行けば、昼間遊んだ場所のはず)
明は岩に掴まりながら、記憶を頼りに進む。
ようやくそこを見つけた。
海に懐中電灯を向けると、海面に紐が浮いていた。それを辿っていくと、ようやく浮き輪を発見した。
「あった!」
思わず声が出る。流されてなかったことに安堵した。
最初は岩場から手を伸ばしてビニール紐を掴もうと試みたが、海面にプカプカ浮いているそれになかなか届かない。
明はバッグを肩から外し、岩場の陰に置いた。サンダルも脱ぎ、七分丈のズボンの裾もできる限り上までたくしあげ、そっと海へと足を踏み入れる。
足首、ふくらはぎ、膝。片手は岩場に掴まりながら、慎重に数歩進むとようやく紐を掴める距離になった。
ほっとして大きく一歩右足を出した瞬間、そこにあるはずの底がなく、明の全身はあっという間に海の中だった。

