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Memory of Night 2
第18章 人魚姫

三人は大声で呼びかけながら、懐中電灯で海を照らした。海は不気味なほど真っ黒で、小さな明かりで見える範囲はとても狭い。
大山も転がっている懐中電灯を拾い、闇雲に海を照らした。
「宵、あれ」
晃の持つ懐中電灯がビニール紐を照らし出した。
「浮き輪を縛ってた紐じゃん」
ということは、浮き輪はまだ海にあるのだろうか。
波に翻弄される紐の先を、懐中電灯で追っていく。すると岩場からだいぶ離れた沖のほうに、浮き輪とそれに掴まる人影が見えた。
「ーー明? 明か! おい、明!!」
大山が全力で呼びかける。
浮き輪に掴まる人物は、はっとしたようにこちらを振り向いた。
「みんなー! おーい! ここー!」
声は間違いなく明のものだった。どうして浮き輪のところになんて行ったのかはわからないが、無事だったことに三人は安堵する。
「明! 何がなんでもその浮き輪離すなよ!」
宵も精一杯の声量で呼びかける。
いくら浮き輪に掴まってるとは言っても、体力を奪われないわけじゃない。高い波を何度も頭までかぶり、そのたびに明は苦しそうに咳き込んだ。
心配ではあるが、どう助けたらいいのか。縄も救命道具ももちろんない。
宵は、岩に押し寄せては水しぶきをあげて戻っていく波を見つめる。
確かに風の影響で荒れてはいたが、泳げないほどではないように見えた。

