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Memory of Night 2
第18章 人魚姫

ーー冷たい水に飲み込まれていったあとは、あまり覚えていなかった。
その時の感覚を一言で表すなら、浮遊感。それでいて腕も足も重くて、ゆっくりと沈んでいく身体をどうすることもできなかった。
ーー大事な人一人守れない。自分はなんて無力で情けない男なのか。
海に飛び込んだって、大切な人のそばにたどり着くことさえできないなんて。不甲斐なさに泣きたいような気持ちで大山は目を閉じた。
もう息も限界だった。
間近に迫る死の恐怖よりも、明の安否だけが気がかりだ。
だが次の瞬間、腕に何かが触れた。大山は微かに目を開ける。
青い光の中で、誰かの気配。
無意識に童話の人魚姫を連想し、それが最後だった。
大山はそのまま意識を手放した。

