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Memory of Night 2
第18章 人魚姫

宵が懐中電灯を向けると、光の正体は大山が身に付けていた腕時計のようだった。青い光に照らされ、すでに意識のない大山とその体を両腕で抱きかかえ、必死で海面に引っ張りあげようとしている明の姿が見えた。
宵もすぐさま二人のもとに泳ぐ。だが明は途中で力尽き、口から気泡を吐いて意識を手放してしまう。
再び沈んでいく明と大山。宵は二人の服や腕を掴み、必死に海面へと引っ張りあげる。
「おい、大丈夫か……っ?」
なんとか上までは戻れたものの、荒れた海で、大人二人を支えるのはさすがにしんどかった。
自分の肩や背に二人の腕を引っかけ、どうにか海面に顔を出させるだけで精一杯。
二人が無事なのかすら、確認している余裕がなかった。
暗闇で何も見えはしなかったが、岸までは確実に遠いだろう。泳いで帰るのは無理。
その時、遠くに明かりが見えた。よく目を凝らすとボートのライトだった。
とっさに宵は、かろうじて持っていた懐中電灯を海面に出し、ボートから光が目に留まるようにした。すぐにボートに乗船していた人物は懐中電灯に気付いたようで、近付いてくる。
「宵‼︎」
驚いたことに、釣り用ボートに乗っていたのは晃だった。
晃はすぐさま船から身を乗りだし、三人の体を順に船へと引っ張りあげてくれた。体力ギリギリのところで助けられたのだった。

