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Memory of Night 2
第18章 人魚姫

数分後。宵と晃は釣り用ボートに乗っていた。
晃が勝手に拝借してきたものだ。明るくなる前に元の場所に返さないといけない。
大山と明があんな様子で、近くにいても居たたまれないのもあり、宵もついてきたけれど。
正直疲弊しきっているからか、体が泥のように重かった。長く潜っていたせいか、海面で波に揺られていたからか、単純な船酔いか軽い吐き気と頭痛もする。
晃も疲れているからか、珍しく無言だった。
疲れを紛らわすため、宵から話しかけてみる。
「おまえがボートを探してくるとは思わなかった」
「俺もまさか、三人とも海に飛び込んでるとは夢にも思わなかったよ。しかも沖に流されてるし、浮き輪にも岸にも居ないから本気でびびった。泳いで助けるのは無理って言っただろ?」
あれ、これはもしかして、若干お怒り気味だろうかと気付く。口調は柔らかいままだが、なんとなく。
「…………だって大山が」
「すぐ人のせいにしない。あと少し気付くのが遅れていたら、三人とも助からなかったかもしれないんだよ? ちゃんとわかってる?」
「…………」
確かに晃の言うことはわかる。
だがあの状況ではどうしようもなかったと思うのだ。
晃から顔を背け、だんまりを決め込む宵に、晃はとんでもない提案をする。
「わからない? それともまだ泳ぎ足りない? どうせ濡れ鼠だし、そこで限界まで泳いでみる?」
そう言って指をさすのはもちろん海。
「……何恐ろしいこと言ってんだ! 殺す気か!」
「まさか。ちゃんとボートの上から見てて、沈んだら助けてあげる。お仕置き」
「どう考えたってお仕置きのレベルじゃねーんだよ。もう拷問だろそんなの」
両腕を掴まれ軽く揺すられ、びくりと体をこわばらせた宵の唇に晃の唇が降ってくる。

