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Memory of Night 2
第21章 宣伝用ポスター

ーーたまに思い出す一シーンがあった。
柔らかな陽の光の中で、白いカーテンが揺れている。布越しに映るシルエットを見つめる。
その奥で産まれて間もない赤子を抱いて、彼女はつぶやいた。
「ーー女に産まれたって、煩わしいことばっかでいいことなんてなーんもねーと思ってたけど」
カーテンを開けると、彼女は水色の患者衣姿だった。
髪もとかさず、寝起きそのままでも変わらず美しかった。精巧な作り物のような綺麗な顔が、ふいに破顔した。
「今だけは、女で良かったって思えるよ。ーーこの子を、産めたから」
黙って彼女の笑みを見つめる。柔らかな眼差しの先には、彼女が愛された証が眠っている。腕の中の赤子を覗きこむと、すやすやと寝息を立てていた。
言うべき言葉ならあった。きちんと用意していたはずだった。
けれど心の奥でメラメラと燃え上がる感情は、それとは真逆の意味を持つものばかり。
たまらず、病室を飛び出した。
そう、あの日自分は彼女におめでとうを言わなかった。……いや、言えなかった?
どちらが正しいのかも、今となってはわからなかったーー。

