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Memory of Night 2
第22章 交渉

「ーーお疲れ様。ちょうどいいタイミングだったかな」
オールバックに切れ長な瞳。強面(こわもて)な第一印象を打ち消す柔らかな声色と、かっちりとした黒いスーツ。
玄関に立っていたのは三浦亮ことローズのマスターだった。
「なんでここに……?」
宵が尋ねると、亮は笑った。
「やだなあ、僕雇い主だからね。そりゃ住所くらいわかるさ。あ、こんばんは、君が晃くんだね。この前ハルちゃんに黄色い花を届けてくれたよね。ありがとう。改めまして、ローズのマスターの三浦亮です、よろしく」
スーツのポケットから名刺を取りだし、会釈と共に晃へと差し出した。
「どうもご丁寧に。大西晃です。宵がいつもお世話になってます」
「いえいえこちらこそ。覚えもいいし、真面目に仕事してくれるから助かってるよ」
「……マスター、何しにここへ?」
春加は憮然としたままだった。
だがそれは、みんなが感じている疑問のはず。
「何、じゃないよ。ハルちゃん店の酒勝手に持ってったでしょ? 客に出すのと同じ金額で天引くからね、給料から。覚悟しておきな」
「…………」
春加は何も言わなかったが、小さく舌打ちが聞こえた気がした。

