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Memory of Night 2
第22章 交渉

試験間近に。それでも大切な恋人に一緒に来てほしいとせがまれれば、断るなんて選択肢あるはずがない。
「せっかくだし、食う? 春加のまかない。温めてくる」
テーブルに並べられた料理を宵が手に取ろうとした時だった。あるものを見つけた。
「……これ、鍵?」
ヒョウ柄のキーケース。そこには何本か鍵がついていて車のもあった。
「こんな大事なもん忘れんなよな……」
呆れて宵がため息をつく。
「てか車のもあるじゃん。なんで帰れたんだ?」
鍵を忘れて車が動くはずがない。
「スペアキーかな」
「普通家に置いとかね? そういうの」
「……持ってたんでしょ、あの人が」
「マスター?」
鍵を? 二人は顔を見合わせる。
そんな大切なもの、上司に渡すだろうか。
「迎えにも、普通の上司部下の関係なら来ないだろうし、そういうことかもね」
「……やっぱし」
宵が小さく呟く。
何か思い当たることがあるようだった。
その日は遅い夕食を取りながら、ポスター撮影に関して宵に説明してもらった。
と言ってもまだ大まかな部分だけで、これから決めていくことばかりのようだ。
「どんな格好で撮るのか、楽しみだね」
「…………楽しみじゃねーよ、全然」
垂れ流したままのゾンビ映画を流し観ながら、夜は更けていったのだった。

