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Memory of Night 2
第23章 墓参り

気温も電車に乗る前より低くなっている気がする。木々が多いせいかもしれない。照りつける陽光をだいぶ遮断してくれている。
せっせと上り坂を歩いていると、突然目の前が開けた。
そこに一基だけ、小さな墓石があった。
「綺麗じゃん」
宵はそう呟いて、首をかしげた。
なんたって人が来ない場所にある墓だ。寺の敷地内で管理してくれているわけでもないので、毎年夏来ると、草や落ち葉や溜まった雨水なんかで目も当てられない状態になっていた。
だが、今日は違った。墓石の周りの草は綺麗に取り除かれ、墓自体も、磨かれたように綺麗だった。墓前には花も供えられていて、線香をあげた形跡もあった。
「誰か、先に墓参りに来た人が掃除してくれたのかな?」
晃が言う。
だが宵は首を横に振った。
「親父の両親は二人とも亡くなってるから、墓参りにくる身内なんていないはずだけど」
「……そうなんだ」
「たぶん志穂さんかな」
二人は線香をあげ、もともと供えられている花のうち、萎れているものだけを取り除いた。買ってきたものと合わせて整え最後に手を合わせた。
そうして顔をあげ、宵はしばらく墓石を見つめたままでいた。

