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Memory of Night 2
第24章 姫橋祭

ーーそして、姫橋祭当日の八月三十一日。
晃は予備校を早めに切り上げ、二人は夕方から祭に繰り出した。
敷地内には屋台が立ち並んでいる。人はかなり多いが、歩いているだけでぶつかるほどではない。
「やっぱ、平日だと多少人減るよな」
歩きながら宵が言う。
一般的な祭は土日に催されることが多いが、姫橋祭は昔から八月の最後の日だった。平日だろうと土日だろうと、関係ない。
夏休み最終日だから、小学生の頃は祭に来たくて必死に宿題を終わらせた記憶が晃にもあった。
長期休みが終わり、新学期が始まる。学生にとっては、そんな区切りの行事でもあった。
「そうだね、仕事の人も多いだろうし。その分夜の花火は混むだろうけど。去年は土日だったっけ?」
「……確か」
去年もこうして、二人で祭に来た。朝から宵を家に呼び、母親の浴衣と軽いメイクを施して連れまわしたのを晃は思い出した。
ただあの頃はまだ、恋人同士ではなかった。宵と晃の間にはいつも金銭のやり取りがあった。
「何か食う?」
ふいに、宵が言う。
「俺は昼軽く食ったけど、おまえ食ってないだろ?」
「いや、一応予備校の休憩時間に菓子パン一つ食べたけど。あとコーヒーも飲んだ」
「絶対足んねーじゃん。つか甘いパンなんて飯じゃねーよ」

