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Memory of Night 2
第25章 夏の終わり

「ーー俺、春から東京の大学に行くんだ」
風のない公園内は静かで、自分の声がやけに大きく聞こえた。
晃の腕の中、宵はわずかに身じろぎした。
「ちゃんと話すのが遅くなってごめん。……ここから通うには遠すぎるから、大学に通う間は東京に住む」
そこは晃の父親が卒業した大学だった。
小さい頃からずっと医者という仕事に憧れていた。晃が産まれた時から父も母も医療にたずさわっていて、二人の背中を見て育った影響が大きいのかもしれない。
いつしか憧れは夢になり、高校を決めた時から、その先の進路も決めていた。大切な恋人ができたからと言って、それを変えるつもりはない。
でもそれは、宵と離れてしまうということ。早くて四年の遠距離、無事に進学、進級、卒業できればいいが、そのあと地元ですぐに就職できるかもまだわからない。
途方もない時間に思えた。
「ーー頻繁に会えなくても、宵は俺のこと好きでいてくれる?」
口にしてみて改めて思う。それが一番怖かったのだ。今までのように、毎日会えなくなる寂しさも確かにあるが、それによって宵の気持ちが離れていってしまったら、と思うと怖くて仕方がなかった。
おまえ、最近なんかウサギみてー。
何日か前に宵に言われた言葉が蘇る。不安な気持ちは隠してきたつもりなのに、そんなにも態度に現れていたのか、と思う。

